根管治療を終えた歯には精度の高い被せ物が必要です!
記事概要
根管治療の後は、その上に被せ物治療を行います。このブログでは、根管治療後の被せ物治療の精度が、いかに重要か、またこれらの治療の質を左右するポイントについて解説しています。
1どんなに良い被せ物をしても根管治療を失敗するとやり直しに
根管治療(歯の神経治療)は、皆さんの歯を長く使っていく上でとても大事な治療です。
建物の工事で言うと基礎工事のようなもので、基礎工事が上手くいっていないと、その上に建てる建造物がどんなに素晴らしい建物でも台無しになってしまいます。ずさんな基礎工事で大型マンションが、まるごと建て直しになるなどの社会問題もあったぐらいです。基礎工事が最も重要であることは、説明しなくともおわかりになるかと思います。
これらのことは、歯の治療でも同じことが言えるのです。
通常、根管治療の後は、その上に被せ物をすることが多いのですが、そもそも被せ物をする前の根管治療がうまくいっていないと、後に歯茎が腫れたり、歯が痛くなって噛めなくなったりして、どんなに良い被せ物が歯に被っていても台無しになってしまいます(前述した例え話の、基礎工事がうまくいかなかった場合の、建物の改修事例と同じ事態です)。
被せ物のやり直しだけならまだしも、最悪、抜歯になってインプラントやブリッジや入れ歯をせざるを得なくなることもあります。まずは、被せ物をする前に基礎工事である根管治療を成功させることが皆さんの歯にとって、とても重要だということを理解していただきたいと思っています。
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2根管治療後の良い状態を維持するために必要な被せ物の精度
根管治療が成功した後、被せ物をしますが、実はこの被せ物治療の質も根管治療の成否を左右します。実は成功した根管治療の状態を長く維持するためには被せ物の精度も重要なのです。
ここで、被せ物の精度とはどういうことを言うのかを説明したいと思います。
被せ物の治療では、歯に被せ物を接着剤で留めるのですが、必ず歯との間につなぎ目が生じます。つなぎ目が歯に、どれだけぴったりフィットしているかを適合といいます。
歯にぴったり合った被せ物は、「適合性の良い被せ物」と言い、歯にぴったり合っていない被せ物は、「適合性の悪い被せ物」と言われます。そしてこの適合で特に重要なのが、歯と被せ物との外側のつなぎ目です。
外側のつなぎ目がぴったり合っていない状態(不適合の状態)だと、そのつなぎ目に細菌の塊である歯垢が溜まっていきます。そこに溜まった歯垢はブラッシングやクリーニングでは落とすことができずに、そこに停滞することになります。その後、時間をかけて、つなぎ目にむし歯が発生し、徐々に歯の中に入り込んでいきます。神経がない歯は、むし歯が歯の中に進んできても痛みが出ないため、気づかずにさらに歯の奥までむし歯が進んでいきます。最終的に、根管の中に入り込み歯の神経の蓋である根管充填を通過して根管の先まで細菌が到達し、根の先に膿を作ることがあります。
ですから、根管治療は根管治療の完了で終わったと考えるべきではなく、後から根管に細菌が入ってこないよう高い精度の被せ物(適合性の良い被せ物)を入れて初めて根管治療が終ったと考えるべきなのです。
クラウンの精度と根管治療の成功率
上記の表を御覧ください。
一番上の、根管治療が良く被せ物の精度が良い(被せ物の適合が良い)と根管治療の成功率が高いのは(91.4%)大きくうなずけますが、根管治療が良く被せ物の精度が悪い(被せ物の適合が悪い)方が(44.1%)、根管治療が悪く被せ物の精度が良い方(67.6%)より根管治療の成功率が低くなってしまっています。
これがまさに前述した通り、被せ物を被せた後に、歯と被せ物とのつなぎ目の隙間から細菌が根管に入り込んできている事が考えられるのです。根管治療が成功していたとしても、残念ながら安心することができないのです。
つまり、根管治療の成功率を上げるためには、根管治療を終わらせた後の被せ物も、つなぎ目を歯にぴったり合わせる最大限の適合精度が必要なのです。
3精度の高い被せ物を実現するための歯科医師の技術!
「だったら、被せ物の精度を上げればいいのに」と思われると思いますが、実は簡単ではありません。
被せ物の精度を上げる(適合を良くする)ためには、①術者(歯科医師)の技術、②被せ物を作る歯科技工士の技術、③精度を高めるための被せ物の材質の選択、④患者さんの口腔ケアなど、4つともすべて重要になります。
まずは、術者、すなわち歯科医師の技術について解説していきます。
被せ物治療の精度を高めるためには、事前の歯周病治療を済ませておくことは当然ですが、被せ物の型採り時も、強拡大視しながら治療を進めることが重要です。
型採り時に治療用顕微鏡を使えば、被せ物の型採りを肉眼や拡大鏡より慎重に進めることができます。治療用顕微鏡を使えば、型採りが必要なところまで確実にできていることを確認しながら進めることができますし、型採り後の型のチェックも高倍率で正確にチェックすることができます。上手く型採りができていないことがチェックできていなければ、不正確な型採りで歯科技工士は被せ物を作ることになり、その結果不適合な被せ物ができてしまいます。
さらに、被せ物の完成時も、治療用顕微鏡で被せ物のチェックをすることが重要です。
できてきた被せ物の精度が良いか悪いかをチェックできていなければ、不適合なまま被せ物が入ってしまいます。
その時にも、治療用顕微鏡で最大倍率まで上げて適合性を確認するべきです。肉眼が1倍だとすると、治療用顕微鏡は最大30倍近くまで拡大視することができます。精度が悪ければ、再度、型採りを当医院ではしています。妥協をすれば、確実に被せ物をした歯の予後が悪くなります。当医院の専門である顕微鏡治療を受けていただく意味がなくなってしまいます。患者さんご自身には適合性の良い被せ物が入ったかは、はわかりにくいとは思いますが、常に妥協をしない。それが当医院のモットーの一つです。
4精度の高い被せ物を実現するための歯科技工士の技術
また、被せ物を作る歯科技工士の技術も重要です。
私たち歯科医師が良い型採りをしても、被せ物を作る歯科技工士の技術が伴わないと結果的に適合の良い被せ物ができません。歯科技工士も皆、国家資格を持っていますが、個々の技術力は異なり、精度の良い被せ物を作成できる歯科技工士は、残念ながらほんの一握りです。提携する歯科技工士も当医院は妥協をしません。どの歯科技工士も同じ精度の技工物を作れるということではないのです。
5精度の高い被せ物を実現するための材料の良し悪し
次に被せ物の材料についてです。
精度の良い被せ物をするためには、被せ物の材質も重要です。被せ物の材質によっては、精度の高い(適合性の良い)被せ物を作ることができないものもあります。被せ物や詰め物の精度が材質によって左右されることを知らない方も多いと思います。
当医院では、根管治療の成功率を上げることと、被せ物をした後のむし歯の再発率を最小限にすることを目指していますので、被せ物の適合性を最優先にするため、被せ物の材質も厳選しています。精度を高められない材質は使いません。
最後に、意外に知られていないかもしれませんが、日々の口腔ケアも型採りの成功率を上げるには重要です。口腔ケアがうまくいっておらず、歯垢が歯の周りに溜まっていると歯肉が腫れてきます。腫れている歯肉は型採り時に容易に出血しやすく、治療用顕微鏡を使っても出血が邪魔をして被せ物の型が不鮮明になってしまいます。ですので、被せ物の精度のため、患者さんの口腔ケアが悪く歯肉が腫れている場合には型採りはせず、口腔ケアが改善して歯肉の腫れがなくなってから被せ物の型採りをするようにしています。
ご自身では、どのような精度の被せ物が自分の口に入っているかわからない方がほとんどだと思います。被せ物の精度を上げるためには様々な要件が必要なのです。根管治療を成功させ状態を維持するためには、根管治療後の被せ物の精度が重要であることを認識していただけたらと思っております。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞