記事概要
歯周病を増悪させる危険因子として、3つのリスクファクター(危険因子)があります。一つは、細菌因子(局所的因子)、一つは宿主因子(全身的因子)、そして環境因子(全身的因子)です。今回は、歯周病のリスクファクターの中の環境因子について深掘りしてご説明していきたいと思います。特に、この環境因子の一つである『ストレスと歯周病の関連』に焦点をあてて解説してみました。
1歯周病のリスクファクターは主に3つ
みなさんもご存知のとおり、『歯周病』とは、歯を抜くことになる原因の50パーセントを占める疾患です。歯周病の初期の段階は自覚症状もなく進むことも多く、歯周病が進行すると歯肉が腫れたり、痛みがでたりなどして初めて歯周病に気づくことになります。
しかし、歯周病に気づく程の自覚症状が出た時には、もう手遅れになっていることも多いです。
歯周病とは、歯を支える歯周組織が破壊され抜歯に至るとても怖い疾患ですが、歯周病を増悪させる危険因子として、3つのリスクファクター(危険因子)があります。
一つは、細菌因子(局所的因子)、一つは宿主因子(全身的因子)、そして環境因子(全身的因子)です。
このように歯周病のリスクファクターはいくつかあるのですが、今回は、歯周病のリスクファクターの中の環境因子について深掘りしてご説明していきたいと思います。
特に、この環境因子の一つである、『ストレスと歯周病の関連』に焦点をあててお話ししたいと思います。
2ストレスによる免疫力の低下
現代社会は、様々なストレスにさらされています。ストレスの社会とも言われるように、多くの人がストレスに晒されながら生活をしています。
しかし、ストレスの歯周病への影響は、考えてもいない事?ではないでしょうか。それではここからは、ストレスが歯周病にどのような影響を及ぼすのか、お話ししたいと思います。
人がストレスに晒されると、主に交感神経が優位になり唾液の分泌が減少します。皆さんは緊張した時、口の中がカラカラに渇く経験をされたことがあると思います。これは、交感神経が優位になり、唾液の分泌が低下したことによるものです。
唾液の中には、ラクトフェリン、リゾチーム、免役グロブリンなど、様々な歯周病菌に対する免疫物質が含まれています。これらが抗菌性を発揮します。
また、交感神経が優位になったことによる唾液量の減少により、自浄作用が低下し歯周病の原因菌が増加しやすくなります。
ストレスをうけると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン分泌され、副腎からコルチゾールに代表される副腎皮質ホルモンが更に分泌されます。
コルチゾールは、免疫活動を担うリンパ球の働きを低下させ、やはりこれも歯周病に悪影響を及ぼします。
以上のように、免疫力の低下によりストレスは、歯周病を進行させる可能性があるのです。
3食いしばりや歯ぎしりによる歯周病の進行
皆さんが無意識に行っている行為で、歯周病に影響する事があります。それは、食いしばりや歯ぎしり(ブラキシズム)です。
食いしばりや歯ぎしりは、ストレスが原因で起こることがあります。
食いしばりや歯ぎしりにより、一部の歯の歯周組織に炎症を惹起させるほどの不自然な強い力が、歯を介して慢性的に歯周組織に加わり、歯周病の進行を加速させてしまうのです。これを咬合性外傷と言います。
食いしばりや歯ぎしりは、日中(起きている間)行うものと、就寝時(寝ている間)行われるものがあります。無意識に行われていることも多いので、なかなか改善することが難しいところでもあります。
そのため、日中の食いしばり・歯ぎしりに対しては、ご自身で意識して咬まないように気を付ける、夜間の食いしばり・歯ぎしりは、マウスピースを口腔内に装着することで歯や歯肉にかかる負担を減少させます。できれば、歯ぎしりや食いしばりに詳しい歯科医院で指導・処置を受けることをお勧めします。
4生活習慣の乱れも歯周病を進行させる
最後に、歯周病を進行させる要因として、ストレスによる生活習慣の乱れについて触れたいと思います。
皆さんも心当たりがあるかもしれませんが、強いストレスがあると、ついつい生活習慣が乱れてしまいます。
例えば、忙しかったり面倒だったりで、歯磨きをせずに口腔内が不潔になったり、また食生活が乱れて必要な栄養を摂れていなかったり、タバコを吸うことにより歯周病に罹患しやすくなります。これらの生活要因も歯周病が進行する要因になりえます。
お口の中の環境というのは、皆さんの生活のリズムや習慣に左右されるという事を覚えておいて下さい。
ストレスは、物差しで測れません。ある人にはストレスに感じることも、ある人にはストレスに感じないかもしれません。
ストレスは、様々な病気に関与しますが歯周病も例外ではありません。歯周病も早期発見と早期治療、そして何より予防が大事です。歯周病は静かに進行していきますので、信頼できる歯科医院で定期的なチェックを受けることをお勧めします。
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顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞