【お悩み相談】Q4.近所の歯科医院で神経をとらなければならないと言われました。神経を残す方法はないのでしょうか?
記事概要
以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。
1回答:歯の神経の状態によっては、神経を残すことができます。
歯の神経は歯髄と呼ばれ、この中に血管や神経など様々な細胞がいます。歯の神経は痛みを感じたり、象牙質と呼ばれる硬い組織に栄養を送って歯を保ち続けています。また、歯の神経はコラーゲン繊維に富んでいるので弾性があり、硬い歯の組織の裏打ちとなることで、力が加わっても歯が割れにくくなるという役割を持っています。
その歯の神経(歯髄)を取ってしまうと、前述した機能が失われ、歯の寿命が短くなってしまうと言われています。
もちろん人工的な材料で代替しますが、生理的なものと比べて良いとは言えず、破折の原因となることが多いです。
一度取ってしまった歯の神経は、二度と再生はしません。歯の神経を大切に温存することは、歯の寿命の延ばすこととイコールなのです。
「近所の歯医者さんで歯の神経をとらなければならない」と言われたということは、それなりの病変があるということかと思いますが、まず最初に、歯の神経を取ってしまったことによって起こるデメリットについてもう少し詳しく解説してみましょう。その後に、神経を残すための治療について解説していきます。
2歯の神経をとるデメリット
歯の神経を初めてとる処置を「抜髄」と言います。
抜髄という治療は、どんな名医が行っても100%の成功率を保証することはできません。抜髄が上手くいかなかった場合、歯の根の先に膿ができてしまいます。膿ができた歯は歯茎が腫れたり、痛くなったりするので「再根管治療」(※1)により膿の改善をはかりますが、再根管治療をやり直す度に治療の成功率は低くなっていきます。(※1:抜髄治療後の2回目以後の神経の治療が再根管治療です)
また、再根管治療でも膿が治らない場合には、手術(外科的歯内療法)が必要になります。
そして、状況により手術(外科的歯内療法)ができない、もしくは手術が成功しなかった場合は、最悪抜歯となってしまいます。歯を失うということです。
また、治療が成功し抜歯に至らなかったとしても、神経が無くなった歯は、欠けたり割れやすくなります。歯の根っこに「ヒビ」が入ってしまう場合(※2)もあります。そうなってしまうと抜歯になることもあります。(※2:歯根破折)
その他、神経を抜いた歯は、歯が黒く変色したり、歯列矯正治療時に歯が動かなくなったりすることもあります。
以上のことから、歯の神経を残すことは大きな意義があるのです。
ここからは、できるだけ歯の神経を温存するための治療について説明していきたいと思います。
3できるだけ歯の神経を温存するために
歯の神経を残すためには、まず歯の神経の状態を診断しないといけません。
もちろん、痛みの症状が強ければ、すぐに歯の神経をとらなければ痛みがもっと酷くなる可能性もありますので基本は抜髄になります。むし歯が大きく歯の神経が細菌感染により大きなダメージを受け炎症を抑えきれないと判断します。
しかし、痛みの症状が弱い場合、もしくは、むし歯を取りきった後、更に詰め物をするため必要な量の歯を削ったら、たまたま歯の神経に穴が空いてしまったケース(歯の神経に細菌がほとんど感染していない)では、神経の炎症は弱く神経を保存する適切な薬剤で露出部を封鎖し、神経を残す努力をします。
この処置を「覆髄」といいます。覆髄については、解説動画をご用意しておりますので、下記の動画を御覧ください。
当医院で行っている覆髄処置(神経を残す処置)ですが、まず、覆髄処置を成功させるためにラバーダム防湿をします。
ラバーダム防湿処置には、唾液からの神経への細菌感染を防ぐ役割と、歯肉に消毒のための薬剤が漏れないようにする役割があります。覆髄処置とラバーダム防湿はセットになっていると考えていいでしょう。
ただし、大きくむし歯で歯が欠損している場合はラバーダム防湿ができません。
その場合は、根管治療と同じように、隔壁(※3)を事前に作ってからラバーダムを設置してから神経に近いところのむし歯をとっていきます。(※3:隔壁についてはこちらの動画をご参照ください)
また、治療用顕微鏡で拡大視しながら何回もむし歯の染め出しをしながらむし歯を除去し、むし歯の取り残しによる神経への細菌の再感染を防ぎます。
このように手間はかかりますが、隔壁を作ることによって確実なラバーダム防湿ができ、治療用顕微鏡を更に使って治療することにより、より確実な覆髄処置をすることができます。
歯の神経をとらずに済めば、歯の寿命を伸ばせることにつなげることができます。歯の神経が無くなると、様々なトラブルを起こし始めます。そういうことから、歯の神経はプライスレスと考えても良いのです。
状況に応じて、できるだけより良い治療をご提供しますので、お気軽にご相談ください。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞