記事概要
根管壁穿孔(パーフォレーション)と根尖病変が原因だったケースの、診断から治療・治療後の経過について動画解説をまじえてブログにまとめました。他院では『抜歯』が必要だと言われましたが、再根管治療を行った結果、膿が改善した患者さんの症例です。
1歯茎が腫れる原因
歯茎が腫れる原因は様々ですが、歯茎が腫れる主な原因として、以下の5つが考えられます。
- ①重症の歯周病
- ②根尖病変
- ③歯根破折
- ④根管壁穿孔(パーフォレーション)
- ⑤セメント質剥離
今回、その中で歯茎が腫れた原因として最初は歯根破折が疑われましたが、実際には根管壁穿孔(パーフォレーション)と根尖病変が原因だったケースの診断から、治療・治療後の経過について、動画を踏まえてお話ししたいと思います。
解説動画
2根管壁穿孔と根尖病変の診断
今回の患者さんは、歯茎が腫れたため、歯科医院を受診したところ、抜歯の診断をうけた患者さんです。抜歯を回避できないかセカンドオピニオンとして当院を受診されました。
早速、CT画像で診断。
CT画像では、歯根の周りの歯槽骨が吸収され、歯根を取り巻く長い影が確認できました。何らかの原因で歯根を取り巻くように歯槽骨の吸収を起こし、そこに膿が溜まって歯茎が腫れていると思われます。
今回のようにCT画像で歯根を取り巻く長い影が確認された場合、その影に沿って歯根破折を起こしている可能性があります。CT画像を更に確認したところ、歯槽骨吸収部位の根管壁に根管壁穿孔(パーフォレーション)を封鎖したらしい所見がみられました。本ケースは、根管壁の穿孔治療(パーフォレーションリペア)、または本来の根管の根管治療が不完全で、それが原因で根管全体に感染が広がり、根管壁穿孔部及び本来の根管の根尖孔の周りに膿ができてしまっている可能性もあります。歯根破折でなければ正しい根管治療で膿が無くなり、抜歯しなくても済むかもしれません。
3根管壁穿孔と根尖病変の治療
患者さんの要望である抜歯を回避できるか、早速、治療を開始。
まずは、被せ物と土台(コア)を外して、通法道理隔壁を作製、ラバーダム防湿を行ったのち、他医院で行った根管充填を除去し、治療用顕微鏡にて病巣部付近の歯根内面壁を高倍率で確認します。
運良く、歯根破折は認められず、根管壁の穿孔治療が行われていることを確認しました。
やはり、前回の根管治療で感染を十分に除去できなかったため、根管内で感染が拡がり、根管壁穿孔(パーホレーション)部位と本来の根管が汚染された事が原因で膿がたまっていることが考えられます。
歯根破折をしていると、抜歯の可能性が高くなりますが、歯根破折や根尖孔外感染が無ければ、あらためて根管内を隅々まで殺菌・消毒し直すことで、膿が改善される事が期待できます。
ただし、根管内を隅々まで殺菌・消毒するのは容易ではありません。
歯の神経の通り道である根管は複雑であることが多く、特に今回の患者さんの根管は、『樋状根管』と言って雨樋のような形をしており、その影響で歯の神経の取り残しを起こしやすいのです。
そして、この取り残した神経が腐敗することで、根管治療をしたにもかかわらず、感染が再び根管内に拡がってまた膿んでしまいます。
今回の患者さんのような樋状根の根管を隅々まで殺菌・消毒するためには、根管治療前にCT画像で複雑な根管の状態を把握することが重要です。さらに、治療用顕微鏡で根管内を高倍率で視認し、きれいに根管内を清掃し直すことが必要です。
勘や経験では、複雑な樋状根管の根管内の細菌感染を除去するのは難しいのです。
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4根管壁穿孔と根尖病変の治療後
今回のこの患者さんも、治療前にCT画像で根管の形と根管穿孔の位置を確認し、ラバーダム防湿を行いながら治療をすすめていきました。
根管治療後の再感染を防止するために、治療用顕微鏡を高倍率で使用しながら根管に感染源を取り残さないよう根管治療を行いました。2ヵ所あった根管穿孔を封鎖(パーフォレーションリペア)し、樋状根管の根管充填を行って根管治療は完了しました。
6ヶ月の経過観察の後、CTを撮影し、歯根周りの透過像が縮小し膿が改善されていることが確認できました。
今回のように歯根破折などを思わせるケースでも、実は、別の原因で膿んでいることもあります。
抜歯の決定をする前に、セカンドオピニオンとして根管治療の得意な医院に相談してみてください。もちろん全てのケースで抜歯を回避できる訳ではありませんが、場合によっては抜歯を免れることがあるかもしれません。
どうぞ、当院にお気軽にご相談ください。
全国で11名の歯科医師のみ、
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顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞