記事概要
何度根管治療をしても歯根の周りに溜まった膿が消えず、当医院で治療することで半年後に膿が改善したケースです。根管内を歯科用顕微鏡でみることで、イスムスという根管同士を結ぶ交通路を確認し、それを除去し、綺麗に殺菌・消毒しました。その結果、抜歯に至らず膿を改善したので、その治療内容を動画で解説いたします。
1歯の根っこの先にたまった膿が心配
顎の中に膿があると、不安になると思います
さらに、その膿が大きいとなると、さらに不安が募ります。
当院に寄せられるお悩みで、最も多いのが治療しても『膿が改善しない』という相談です。
今回は、歯根を取り巻くような大きな膿があったのですが、適切な根管治療で半年後には膿が治ったケースを動画で紹介します。
この患者さんは、根管治療を何度繰り返しても、歯茎の膿みが治らないということで来院されました。初診時は、歯茎に膿の腫れがありました。
CT画像でも、歯根を取り巻くように膿の大きな影が確認でき、そこから歯茎の方に膿が漏れ、歯茎が腫れていることが考えられました。
さらには、その膿の影が大きかったので、歯根にヒビが入り、根が割れてきている可能性も考えられるケースでした。また、根管が複雑に枝分かれしていることにより、根管のどこかに殺菌・消毒しきれていないところが残っているため膿が改善しないことも考えられます。肉眼やルーペでは発見できない根管が、治療されずに残されてしまっていることはよくあることです。
2歯科用顕微鏡での再根管治療
まずは、再根管治療を開始することにしました。治療用顕微鏡で消毒しきれていない根管を見つけて、殺菌・消毒すれば膿が改善する可能性もあります。(歯根破折もなく、根管の隅々まで消毒し直したのに膿がなくならない時は、根尖口外感染も考えられます。根尖口外感染の場合は外科手術が適応になります。)
通法通り、隔壁を作成しラバーダム防湿を行い再根管治療を開始しました。根管治療は清潔第一です。
ラバーダム防湿を行うことで、治療中に根管への唾液の流入を防ぎ、細菌感染を防止することができます。また、歯肉への薬剤の漏洩も防げるので、適切な根管消毒剤を使用することができるようになります。
適切な根管治療をするためには、細菌が入りこまない清潔な環境作りと、根管に潜む細菌を殺菌・消毒する最適な消毒剤が必要です。以上のことから、根管治療時には、ラバーダム防湿は必須と考えていただきたいと思います。
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3イスムスを除去し根管の隅々まで殺菌・消毒
このケースは、CT画像により、根管に『イスムス』という根管と根管を結ぶ非常に細い交通路があることが認められました。
『イスムス』があると、そこに消毒薬が入り込めず、完全に殺菌・消毒しきれない細菌が潜んでいることが予想されます。そのため、治療用顕微鏡で根管を視認しながら、慎重にイスムスを除去し、根管の隅々まで殺菌・消毒できる状況を作りました。
根管治療を成功させ、再根管治療にならないためには、根管の見落としを防ぎ、殺菌・消毒をすることが重要です。
こちらの患者さんには歯根破折は見られませんでした。
それを確認した後に、全ての根管を清掃し、根管充填をして根管治療が完了し、半年間の経過観察となりました。
6ヶ月後のCT画像では、根管の周りを取り巻くようにできていた大きな膿の影がほぼ消失していました。再根管治療が成功し、膿が改善したので、抜歯を回避し歯を残すことができました。
本ケースのように膿が大きくても、膿んでいる原因が歯根破折でないかぎり、適切な根管治療を行えば、膿が治ることもあるのです。
歯根の周りにできている膿が大きくても、諦めずに根管治療の得意な医院に相談することをお勧めします。
解説動画
4当院の根管治療成功率
日本の根管治療の成功率は30〜50%(失敗率は50〜70%)であり、残念ながら世界的にも決して誇れるものではないという学術データが出ています。世界の成功率に届き、更に超えることを目指すべきと考え、日々診療をしています。
当院の根管治療(非外科的歯内療法)の成功率は96.1%であり、必要に応じて外科的歯内療法(外科手術)を併用した場合には成功率が98.7%に向上します。外科的歯内療法は通常、非外科的歯内療法で治癒しなかったケースに行われますが、当院では非外科的歯内療法で治癒に導けることが多く、外科的歯内療法を必要としないことがほとんどです。さらに、根管治療または外科的歯内療法で膿が治った後には、膿が再発するケースは、ほぼ100%ありません。(術者がベストを尽くしても患者側の生体反応の違いにより、治療の成功率は100%と言い切ることはできませんが、当院では、ほぼ100%に近い成功率を出しています。)
更に当院では、根管治療が成功した状態を維持するために、根管治療後に入れる被せ物も高精度に製作し、細菌の根管への再感染を(コロナルリーケージ)を防ぎます。
根管治療のみならず、根管治療後の被せ物治療も顕微鏡を使って責任をもって作成することにより、予後の良い状態を保つことができています。これらは、当医院の15年間の顕微鏡治療の結果によっても証明されています。

全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞