記事概要
歯周病、むし歯、歯の破折など、歯が痛くなったり歯茎が膿んで腫れたりする原因は、様々です。その原因の中にパーフォレーションがあります。場合によっては無症状で経過していることも多く、根管治療中に見つかることもあります。ご本人も気づかず、何事もなく何年も過ごしていることもありますが、実は重大な問題であり、状況よっては将来パーフォレーションが原因で抜歯に至るかもしれないのです。
今回は、歯の運命を左右するかもしれないパーフォレーションについて書いてみました。
当医院は、顕微鏡歯科治療専門の歯科医院です。2010年より、むし歯治療(詰め物・被せ物)、根管治療、歯周病治療、抜歯などの口腔外科手術、定期検診など、全ての治療に歯科用顕微鏡を使用し、治療の成功率を高めてきました。長年、歯科用顕微鏡を使って治療してきた結果、治療成功率の高さ、予後の良さを日々実感しています。皆さんのお悩みを真剣に解決するため、これまで蓄積してきた顕微鏡歯科治療の知識と技術をもって貢献したいと思っています。
では、パーフォレーションの治療について当医院の専門である顕微鏡歯科の視点をふまえて説明していきたいと思います。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
歯科医師岡野 眞
1パーフォレーションとは
歯の神経が存在するところを歯髄腔といい、神経の通り道の管を根管といいます。
そして、その歯髄腔が周りの骨や歯茎と根管以外で交通することをパーフォレーション(穿孔)といいます。簡単にいうと歯の壁に穴が開いているような状態です。
2パーフォレーションの原因
3パーフォレーションの影響
昔は、穿孔を起こしている歯の予後は悪いことが多かったのですが近年、マイクロスコープの普及や材料の進歩により穿孔を起こしていても予後を見込める症例が増えてきました。
パーフォレーション(穿孔)を起こすと、根尖性歯周炎と言って歯の周りに膿を持つような病気を引き起こし歯茎が腫れてり痛みがでたりします。しかし、それが起こる理由は穿孔が存在するからではなく、穴の空いた部分が細菌感染の温床となったり、周りの組織と交通してそこに細菌感染を引き起こしてきたりするためです。そのため、細菌感染の除去を行い穴の開いている部分を適切に封鎖する処置を行います。
4パーフォレーション(穿孔)の診断
パーフォレーションしているかどうか診断するためには、いくつかの方法があります。
外側からは見えないことが多いので、レントゲンを撮影し穿孔の有無を調べたり、さらに精密な診断を行うためには歯科用CTを撮影し、三次元的な画像を用いて行います。
また、根管の中からマイクロスコープを用いて観察することで、小さいパーフォレーションでも目視で穴が開いている位置を正確に認識することもできます。
5パーフォレーション(穿孔)の治療法
パーフォレーションの治療は、根管壁に穴が開いている場所に応じて以下の方法が選択されます。
- ①コンポジットレジン充填
- ②MTAセメントなどでの根管壁穿孔部の閉鎖
- ③歯冠長延長術
- ④矯正による歯の挺出
- ⑤意図的再植術
- ⑥歯根分割
- ⑦分割抜歯
歯周ポケット底より上に穿孔部がある場合は、①コンポジットレジン充填、③歯冠長延長術、④矯正による歯の挺出、で対処します。
歯周ポケット底より下に穿孔部がある場合は、②MTAセメントなどでの根管壁穿孔部の閉鎖、⑤意図的再植術、⑥歯根分割や⑦分割抜歯、で対処します。
穿孔による根管壁の欠損が、歯肉縁上から歯肉縁下まで大きく拡がりすぎ対処が難しい場合は、抜歯せざるを得ないこともあります。
6パーフォレーション(穿孔)治療の予後に影響を与えるもの
パーフォレーションが存在する歯を治療する際、その治療が成功するかどうかはパーフォレーション(穿孔)部の細菌感染の除去・再感染の防止が重要となります。
治療の予後に影響を与える因子としては、時間経過、穿孔部の大きさ、穿孔部の位置、術者の技術と穿孔部位へのアクセス、穿孔部を封鎖する修復材料の種類があげられます。
① 時間経過
穿孔が起きてから治療が行われるまでできるだけ早い方が良いと言われています
穿孔が起きてから時間が経過すると穿孔部分が細菌感染の温床になり、周りの組織に炎症が引き起こされます。
そして、感染がさらに進むと肉芽組織という体の防御反応で柔らかい炎症の組織ができます。これが穿孔部の外側から根管の中に入り込み、その後の治療を困難にする要因の一つとなります。
② 穿孔部の大きさ
一般的に穿孔部の穴の大きさが小さければ小さいほど予後は良いとされています。穴が大きければ大きいほど、周りの組織への影響が大きく、歯が痛くなったり膿んだりする原因である細菌感染を除去することが難しくなります。
③ 穿孔部の位置
穴の位置も予後に大きく関係します。根管に起きた穿孔の位置が歯の頭側に近づくにつれて歯周ポケットと通じやすくなり歯周ポケットからの穿孔部への感染が生じやすくなります。一方、歯周ポケットから離れた歯の根の先の方にできた穿孔は感染が生じにくく適切な封鎖処置が行われれば比較的良好な予後が期待できます。
④ 術者の技術とマイクロスコープ(治療用顕微鏡)
術者の技量やマイクロスコープの使用は、穿孔部の治療の予後に影響を与える可能性があると言われています。マイクロスコープがあることで暗い根管を明るく照らし、十分な拡大視下で治療を行うことができ精度が大きく上がり、治療が成功しやすくなります。
⑤ 穿孔部に使われる修復材料
歯周ポケットより下の穿孔部に用いる材料には生体親和性があること、そして封鎖性に優れていることが求められます。さまざまな歯科材料が使われてきましたが、穿孔部は出血などがあり乾燥状態を維持することが難しく完全に封鎖し、細菌の付着や細菌の出入りを長期間防ぐことが困難でした。しかし、近年MTAセメントという材料が普及し、湿潤下でも封鎖性が高く生体親和性も優れているため穿孔部を封鎖することができるようになりました。
また、歯周ポケット内の穿孔部の封鎖は、コンポジットレジン充填が適切です。ただ、歯周ポケット内の穿孔部の封鎖は歯肉を切開して穿孔部を露出させることが必要なことがあります。
以上のように、優れた材料を使用しただけでは予後は担保されません。
ラバーダム防湿やマイクロスコープの使用など、きちんと細菌感染を防ぐための環境や設備を整える必要があります。
7パーフォレーション(穿孔)があって膿んでいても抜歯ではない
パーフォレーションが見つかり、抜歯と言われることもあるかもしれません。しかし、現在はパーフォレーションに対して様々な対処方法があります。パーフォレーションがある=抜歯ではないということを認識していただけたらと思います。
パーフォレーション封鎖の実際の画像です。
8歯にパーフォレーションがあり、膿んで痛んだり歯茎の腫れで悩んでいる方の治療メニュー
当院では、パーフォレーションが元で歯茎の腫れや膿が治らない方に、以下のように治療を進めていきます。ただし、これは一般的な治療方針です。患者さんの個々の状況により、治療内容に多少の差異が生じます。
パーフォレーションによる歯茎の腫れや膿で悩んでいる方は、一度、お電話でお問合せいただくことをオススメいたします。
STEP.1
初回カウンセリング
問診でお口の問題をヒアリング初診当日はカウンセリングとなります。
① 問診表の記入
② マイクロスコープ検査、レントゲン・CT撮影と診断
③ 治療計画および治療内容のご説明
※治療期間、費用等、患者さんと相談の上、治療方針を決定いたします。その後、次回の治療予約となります。
STEP.2
隔壁作成
まずは、隔壁を作成します。隔壁とは、唾液から穿孔部への細菌感染を防ぐためと、穿孔部の治療で次亜塩素酸ナトリウムなどの適切な薬剤を安全に使えるようにするためのラバーダム防湿を行う為に作成する「壁」の事です。大きく歯が欠損していても隔壁を作ることでラバーダム防湿ができるようになり、この先の治療が安全に確実に行えるようになります。なお、「隔壁作成」前に、被せ物・詰め物・土台・裏層の除去が必要なことがあります。
STEP.3
根管治療開始
ここからパーフォレーション治療の開始となります。1回の治療時間は、約60分ほどです。治療回数は、穿孔部の状態によって変わります。(治療回数はおおよそ1~5回位です)
根管パーフォレーション治療時は、毎回、ラバーダム防湿を設置します。そして、CT画像を確認しながら治療用顕微鏡下で穿孔部の清掃・殺菌・消毒・穿孔封鎖を精密に行います。
STEP.4
支台築造・仮歯作成
パーフォレーション治療が完了した後は、土台作成(支台築造)を行っていきます。当院では、土台作成時にもラバーダム防湿を行います。また、必要に応じて更に仮歯を作成し、経過観察に入ります。
STEP.5
治療判定
当医院では通常、根管治療終了後6ヶ月後に患部のCT撮影を行い、治療効果を判定します。
フィステルが再発せず根尖病変(根の先の膿)の改善がみられた場合は、被せ物治療に移っていきます。被せ物治療は、むし歯が再発し根管に再感染しないよう、治療用顕微鏡を使って精密に行います。
フィステルが再発したり根尖病変の改善が見られない場合は、患者さんと相談後、外科的歯内療法、歯根の部分抜歯などを予定します。
9当医院ではセカンド・オピニオンも行っています
他院で治療中であっても可能です
パーフォレーション治療をしているが、歯茎が腫れてまた膿ができてしまう。
パーフォレーションは治らないので抜歯と言われた・・・
という方は、お気軽にご相談ください。
当院は自由診療となっております。以下に治療費を掲載いたします。
※各種クレジットカードでお支払いいただけます。
カウンセリング料金 ¥11,000
・顕微鏡による、むし歯・歯周病検査など
・レントゲン撮影
CT撮影料金 ¥11,000
通常、CT撮影は別途 33,000円がかかりますが、初回のみ11,000円で撮影します。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞