知ってほしい本当の歯科用顕微鏡の実力8ポイント!
記事概要
顕微鏡歯科治療ってご存知ですか?顕微鏡歯科治療とは歯科用顕微鏡を用いて行う歯科治療です。当院ではすでに15年ほど前から歯科用顕微鏡を導入し、ほぼすべての歯科治療で顕微鏡を使っています。歯科用顕微鏡の優れた力をより専門的な視点からご説明すると共に、当院の顕微鏡歯科治療についてもご紹介します。
1はじめに
本ブログは、患者様から寄せられたお悩みへの回答を中心に、皆さんにぜひ知っていただきたい大切なお話を、できるだけ分かりやすくまとめて記事にしています。
今回は、患者さんからのお悩みではなく、よくある歯科治療の現場の問題を例に、特に知っていただきたい事実を説明いたします。
今回のブログは、当院が15年ほど続けてきた、顕微鏡歯科治療の優れたところについてお話したいと思います。当院が顕微鏡歯科治療を始めた当時は、ほとんど導入されていなかった歯科用顕微鏡も、今は、導入する歯科医院が増えてまいりました。ただ、残念ながら患者さんの方々には、顕微鏡歯科治療の本当の良さがまだ十分に伝わっていないようです。
そこで、今回のブログでは、より専門的な視点から、分かりやすく歯科用顕微鏡の力を説明します。
2歯科用顕微鏡の最大のメリットは『良く見える』こと。
当医院で歯科治療に歯科用顕微鏡を使うようになってから、15年弱が経過しました。
以前は、歯科治療に顕微鏡を使うと説明しても、患者さん側がピンときていませんでしたが、今では、認知度少しもあがり、よく勉強されて来院される患者さんも増えてきました。
なぜ、歯科治療に歯科用顕微鏡が必要なのか?
それは、お口の中は、良く見えないからです。
隣にいる方に、アーンと口を開いてもらってお口の中を覗いてみてください。
奥に行けば行くほど暗くて見えなくなりますよね。
特に根管(歯の神経の通り道)や歯周ポケット(歯と歯茎の間にある溝)の中は、更に細く狭く、より繊細な治療が必要な場所なのに、どうやって治療しているんだろうと思いますよね。実は、肉眼や拡大鏡(ルーペ)では、根管やポケットの中はよく見えないのです。よく見えなければ『勘』による治療になってしまいます。
歯科用顕微鏡で治療をするようになってからは、それまで行き詰まっていた壁をことごとく乗り越えることができるようになりました。それは、顕微鏡を使うことにより『勘』に頼る治療をしないで済むようになったからです。
歯科用顕微鏡は、暗く狭い口腔内での治療に、とても大きな力を発揮するのです。
歯科用顕微鏡は、一般的なユニット(治療椅子)に備え付けられているライトより、光源を患部により近づけられるため、より明るくお口の中を照らすことができます。はっきりと、鮮明に、歯や患部、根管内(歯の神経の通り道)や歯周ポケットの中を見ることが出来るのです。
歯科用顕微鏡の拡大倍率は3〜30倍です。
それにくらべて肉眼は1倍、ルーぺ(拡大鏡)は平均で2〜3倍、良くて8倍です。肉眼やルーペで見えなかったものが、顕微鏡では見えてきます。
私が顕微鏡治療を始めて思ったのは、とにかく良く見える‼ということです。
私も年齢的な変化で多少の老眼があります。しかし、この老眼を感じている私の視力の弱点が歯科用顕微鏡を導入することにより、視力を補うどころか、それ以上、余りあるほどの視力の強化ができました。
それに加え、これまで自分が臨床で培ってきた知識と経験をプラスすることで、さらに良い治療結果を出す事ができ、今まで上手くいかなかった治療が、ことごとく上手く行くようになりました。
結局は、老眼うんぬんの前に、歯科用顕微鏡を用いる前は、よく見えていなかったのです。
見えていないことで、なすべき事が、そこで行われていなかったのです。正しい情報がなければ、正しい診断と、正しい処置ができません。歯科用顕微鏡を使うようになり、この15年で実感していることは、この一つに総括できます。
より大きく拡大する事によって状況判断が正確になり、また誤った判断もしなくなり肉眼やルーペより成功率の高い治療が可能となります。(加えて言うなら、脳外科でも顕微鏡治療が主流になっているのは、よく見えるし繊細な治療ができるからです。)
よく見えれば治療が上手くいく。当たり前といえば当たり前の話です。
3当院の顕微鏡歯科治療は、2種類の顕微鏡を使い分けています
それでは、実際、歯科治療に歯科用顕微鏡を使って感じていることをご説明します。
顕微鏡歯科治療を用いるメリットは、まとめると3点です。
術野の拡大、
明るい照明、
そして、ドキュメンテーションです。
拡大による視覚強化は、どのメーカーの顕微鏡を使っているかが重要です。
メーカーや機種によってレンズの明るさやフォーカス合わせのシステムも違うのですが、やはり、当院が2台導入しているカール・ツァイスのプロエルゴが最適です。
歯科用顕微鏡に搭載される照明は、ハロゲン、LED、キセノン等がありますが、私は2種類の光源のプロエルゴを使い分けています(ハロゲンとキセノン)。
例えば、コンポジットレジン充填、インレー、クラウン、などの補綴治療時は、ハロゲンライトを使用します。
逆に、歯周病、根管治療時等にはキセノンライトを使います。
キセノンライトは、実は、ハロゲンライトの2倍以上の明るさがありますので、根管やポケットの中など、より狭く暗いところを覗くのに適しています。
それに対して、ハロゲンライトは、キセノンライトよりコンポジットレジン充填に適しています。キセノンライトの波長は、コンポジットレジンが固まりやすい波長です。充填途中でコンポジットレジンが固まり始めてしまうと、うまく充填できません。ですので、充填中に固まりにくい照明であるハロゲンライトをコンポジットレジン充填時に使うのです。
このように顕微鏡も治療内容によって最適な顕微鏡を使い、更に治療の成功率を高めます。
そして、最後にドキュメンテェーションです。
ドキュメンテーションとは、いわば治療記録の事です。
治療用顕微鏡にはカメラやビデオを付けることが出来るので、治療時の状況を録画し、治療後に動画をディスプレーに再生して見る事が出来るので、患部の状態や治療内容を患者さんに伝えやすいのです。
言葉より写真、写真より動画の方がより理解しやすいはずです。
治療後に必ず動画をお見せしていますので、顕微鏡治療の担保をする事ができるのです。自分の治療内容をその場で見れるのは、患者さんにとって安心材料にもなると思っています。
それでは、顕微鏡歯科治療は、どのような治療でメリットがあるのかについて、私の実際の経験からお話してみたいと思います。
41.歯の神経の治療(根管治療)
根管治療においては、根管の奥の奥である根管の先が綺麗になっているかが最も大事です。しかし、根管は細く狭く、肉眼やルーペでは根管の根の先を見ることはできません。見えなければ治療が不十分なのに気がつかないまま根管治療を終えてしまうかもしれません。治療用顕微鏡は、根管の奥の奥である根管の先端まで見ながら治療することができるのです。
上が拡大鏡の倍率で見た画像です。根管の中は暗くてよく見えません。下は、マイクロスコープで見た画像です。根管内が明るくハッキリ見えます。
52.歯周病治療
歯周病を改善するためには、歯の根に付いた歯石を除去することが必要です。しかし、歯周病が進行して来ると歯周ポケットは深くなり、歯石も奥深いところに付いてきます。
歯周ポケットは狭いので、深くなればなるほど歯石は見えなくなります。また歯の根の表面は溝があったりデコボコしていたりするので、歯石の除去は更に大変になります。
歯周ポケットが深くなると肉眼やルーぺではよく見えないので、勘や手指の感覚になります。そうなると、どうしても歯石の取り残しが多くなり歯周病が治りにくいということになります。
治療用顕微鏡は明るい光源で狭い歯周ポケット内を照らし、大きく拡大することによって勘ではなく目視で歯石を除去することができます。
63.コンポジットレジン充填(虫歯の詰め物治療)
むし歯治療の中で歯に樹脂を詰める方法をコンポジットレジン充填と言います。型をとらずにダイレクトに術者がその場で詰め物を詰めていくので、術者(歯科医師)の技量がそのまま出ます。歯と詰め物とのつなぎ目が上手く合わないと、そこにバイ菌が溜まってむし歯が再発します。
そのつなぎ目を大きく拡大すればするほど歯にピッタリ合った詰め物ができるので、歯科用顕微鏡で、大きく拡大し上手く合っているのを確認しながらコンポジットレジンを詰めることにより、つなぎ目にバイ菌が溜まりにくくし、むし歯の再発を減らすことができます。
74.クラウン・インレー(歯の修復治療)
型を採ってむし歯の歯を修復する方法にクラウン(被せ物)とインレー(詰め物)があります。むし歯が大きくコンポジッットレジン充填ができないケースに多く用いられます。
コンポジットレジン充填と同じく、クラウンやインレーが歯にピッタリ合っていないと、つなぎ目にバイ菌が溜まってむし歯が再発します。
クラウンやインレーを作るための型どりが正確にできないと、精度の悪い、歯にピッタリ合わないクラウンやインレーができてしまいます。やはり、型とりも歯科医の技量が出ます。また、型から実際にクラウンやインレーを作る歯科技工士も、ピッタリ歯に合わせられる歯科技工士出なければ、精度の悪いクラウンやインレーができてきてしまいます。
歯科用顕微鏡で拡大しクラウンやインレーを歯にピッタリフィットさせることによって、清掃しやすくバイ菌が溜まりにくい状態にすることができ、むし歯が再発しにくく歯を長持ちさせることができます。
上の写真は、矢印のところが金の詰め物が飛び出しています。汚れが溜まりやすく、フロスも引っかかってしまいます。下の写真は、当医院で行った詰め物です。歯にピッタリフィットしています。この状態なら、フロスも引っかからず、清掃しやすいのでバイ菌が溜まりません。
85.確実なむし歯の除去
歯にむし歯が残ったまま詰め物や被せ物をすると、むし歯が歯の中で再発します。また、歯にむし歯が残ったまま根管治療(歯の神経の治療)をすれば、残ったむし歯から根管にバイ菌が入り込むので根管治療は成功しません。歯は小さいですし、お口の中は暗く、奥にいけばいくほどむし歯を取り残しているか見えづらくなります。また根管も細く、暗く、むし歯(感染歯質)が残っているかは判断しづらいのです。
歯科用顕微鏡を使えば見えづらい場所や根管の中を明るく照らし、大きく拡大して見れるので、むし歯(感染歯質)の取り残しを防ぐことができ治療の成功率を上げ歯を長持ちさせることができます。
96.外科手術
抜歯、歯周病の手術、外科的な根管治療(歯根端切除術)にも治療用顕微鏡を使用しています。明るく照らし拡大することによって患部が良く見えるため、口の奥で見えにくく処置が難しい場所も確実な治療ができ、また歯肉を大きく切り開かなくても処置ができたり、非常に細い縫合糸が使えるので、傷の回復が早かったりなど、お口の中の外科処置でも治療用顕微鏡は大活躍します。
107.治療説明
治療用顕微鏡にはCCDカメラが備えられており、治療風景をビデオ撮影しHDDに記録することができます。治療後にその画像を治療椅子に備え付けたテレビモニターに再生し、治療前の状態、治療中の状態、治療後の状態を見ながら説明を受けることができます。
また、ヘッドマウントディスプレイ(眼鏡型のモニター)を掛ければ治療風景をライブで見ながら説明や治療を受けることができます。
118.むし歯・歯周病予防
むし歯と歯周病予防の基本はブラッシングです。
むし歯菌や歯周病菌を歯ブラシやフロス、歯間ブラシで確実に落として予防します。
どこにどの位の歯垢(細菌の塊)の磨き残しがあるか、理解したうえで歯磨き指導を受けたほうがわかりやすいと思います。治療用顕微鏡にはCCDカメラが備わっていますので、磨き残しを録画し治療椅子に備え付けのモニターでその場で再生して見ていただく事が可能です。
どの場所をどのような清掃器具を使って磨き残しを落とせばよいかが理解しやすいのです。
12まとめ
歯科治療は、治療用顕微鏡との相性がとても良い分野です。
ほぼすべての歯科治療で有効であり、私は1日8時間の診療時間のうち、ほぼ8時間顕微鏡を覗き続けて治療しています。
私の臨床では、治療用顕微鏡がないと治療にならない状態です。視覚の強化がどれだけ治療のクオリティーを上げることができるか、理解していただけるよう今後も情報発信していきます。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞