歯の詰め物や被せ物(クラウン)、長持ちさせるためには?
記事概要
むし歯を削って詰め物や被せ物をすれば、むし歯にならない、むし歯になりにくくなると思っていませんか?実は、むし歯の原因の80%が詰め物・被せ物治療した歯のむし歯の再発です。詰め物や被せ物の間違った理解を正し、詰め物・被せ物の適合を良くすることが、いかにむし歯の再発防止に繋がるのかを説明します。
1はじめに
本ブログは、患者さんから寄せられたお悩みへの回答を中心に、皆さんにぜひ知っていただきたい大切なお話を、できるだけ分かりやすく記事にしました。
今回は、患者さんからのお悩みではなく、よくある歯科治療の現場の問題を例に、特に知っていただきたい事実をご説明いたします。今回のブログは、精度の悪い詰め物や被せ物からむし歯が再発する!という話です。むし歯の原因の80%が二次カリエス(歯と詰め物・被せ物とのつなぎ目からのむし歯の再発)と言われています。詰め物や被せ物はむし歯になりにくいという間違った認識を正し、詰め物・被せ物の適合を良くすることが、いかにむし歯の再発を防ぐ事に繋がるかについてブログにまとめました。
2詰め物や被せ物治療は、むしろむし歯になりやすくなる
実は、“むし歯を削って詰め物や被せ物をすれば、むし歯にならない、もしくは、むし歯になりにくくなる”と思っている方が多いようです。皆さんはいかがでしょうか?
『えっ、そう思っていたよ!』
という方に、真剣に聞いていただきたい話を今回のブログにまとめます。正しい知識を持っていただき、ご自身の歯を末永く守っていただくことを、歯科医として、切に願います。
結論からお話しすると、
実は、詰め物・被せ物によっては、寧ろ、むし歯になりやすくなります。意外ですよね!むし歯の治療したはずなのに、どうしてむし歯になりやすくなってしまうのでしょうか?正に、矛盾した話だと思いませんか?
ここから、その理由を説明していきます。
むし歯は汚れ(歯垢)が溜まるところにできます。つまり、歯垢が無ければむし歯にはならないのです。ところが、歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目が合っていないと、必ず繋ぎ目に歯垢が溜まります。そして、そこからむし歯が再発するのです。さらに困ったことに、その合っていない繋ぎ目に溜まった歯垢は、歯ブラシやフロス、歯科医院でのクリーニングでも落とすことができません。
要は、詰め物・被せ物をした歯が、むし歯の原因である歯垢を落としやすい状態になっているかどうかなのです。
天然の歯であれば(歯並びがきちんとしていれば)、適切なブラッシングで歯垢を落とすことができ、むし歯のリスクを下げられます。
しかし、詰め物や被せ物が入った歯のむし歯のリスクは、その詰め物や被せ物の精度の影響を大きく受けるという事を知っていただきたいと思います。
では、被せ物の精度とは、何でしょうか?
簡単に説明すれば、歯と被せ物との繋ぎ目がピッタリ合っているかどうか(適合)です。
ピンと来ない人も多いかもしれません。なぜなら、日本の歯科治療は、全くそこに触れてこなかったからです。一般の方々の認知も低く、詰め物・被せ物に精度があることなど知りません。当たり前に治療してもらい、すべて適切な精度で処置が行われていると思われているのではないでしょうか。
しかし現実は、残念ながら、そうなっていません。
当然のごとく、詰め物・被せ物の精度が良くなければ、そこに歯垢が溜まり、バイ菌の巣ができてしまいます。詰め物・被せ物の精度が悪いと、そこには歯ブラシなどの清掃器具は当たりにくく、そこからむし歯が再発していきます。一生懸命歯磨きしても、精度の悪い詰め物や被せ物に阻まれて、むし歯の再発の原因である歯垢を落とせないのです。特に、神経を抜かれてしまっている歯はむし歯が進行してきていても痛みがでないので、抜歯寸前の状態になるまで気が付かない時もあります。
自分の歯の詰め物や被せ物が、どんな状態か不安になる方も多いと思いますが、詰め物や被せ物がピッタリ合っているかどうかの一つの目安としては、フロスが引っかかるかどうかです。
これまで、歯科医療が触れてこなかった、詰め物・被せ物の精度の低さが、実は、むし歯の再発の原因になっているのです。
3むし歯治療が、むし歯の原因になってしまっているという悲劇
むし歯の原因の80%は、治療したところの再発です。多くの歯科医は毎日のように、治療のやり直しをしています。
『やり直し治療』とは端的に言えば、歯と被せ物や詰め物との繋ぎ目からのむし歯の再発に対する治療の事です。適合が悪ければ、むし歯の再発から逃れることができません。現状の歯科治療のやり方では、治療すればするほど、どんどんダメになる可能性が高くなっていきます。歯の治療が逆に歯の寿命を短くしてしまっているのです。
なぜそんな事になってしまっているのでしょうか?
『やり直し治療』になる原因は、マージン部のプラークです。
マージン部というのは、歯と被せ物の間の繋ぎ目の事です。
歯と詰め物・被せ物のフィットが悪いと、ここにプラークが溜まります。ここにプラークが溜まると、家庭での歯磨きはもちろんのこと、歯科医院でのクリーニングでさえ落とすことができません。そこにプラークが残るために、そこからむし歯が進行していきます。
もちろん、おひとりお一人のむし歯のリスク度にも左右はされますが、このマージン部のプラークは再石灰化の影響を受けにくいと言われています。
実際、私が日々の診療で患者さんのむし歯を見ていても、やはりこのマージン部からむし歯が進行していくケースが非常に多いです。
常識的に考えてみても、天然歯と人工の被せ物の間にプラークが溜まりやすいとい状況は、容易に想像出来ると思いませんか?詰め物や被せ物の適合にこだわる歯科医師の私は、これらは非常に深刻な問題であると思っています。
これらを踏まえ、それでは、むし歯の再発を防ぐためには何が必要なのかをまとめたいと思います。
4マージン部の適合精度を上げる、高倍率の歯科医用顕微鏡治療
それは、一も二も無く、歯垢が溜まりにくい清掃性がしやすい詰め物・被せ物にすることです。つまり、歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目がピッタリ合った詰め物・被せ物が必須です。
左の画像の矢印のところが段差のところです。この状態だとフロスをかけてもひっかかってしまいます。右側の写真は、当院で治療した詰め物です。矢印のところが精密治療によって、段差のない詰め物が入った状態です。フロスがひっかかることはありません。
『歯垢が溜まりにくい清掃性がしやすい詰め物・被せ物にする』
こんな簡単な理屈は、歯科医師でなくとも、一般の方々でも容易に想像できる話でしょう。しかし、今まではここをあまり重要視されていませんでした。
その理由は、詰め物や被せ物を歯にピッタリ合わせるのは簡単ではなく、精確な充填ができる、または精確な型が採れる技術を持った歯科医と精確な被せ物が作れる歯科技工士との連携がなければ不可能だからです。
これらの要件を満たすためには、歯科用顕微鏡を使用した高度な技術が必要です。もちろん、歯科用顕微鏡を導入しているというだけではなく、歯科用顕微鏡を正しく使いこなせなければなりません。マージン部(歯と詰め物・被せ物との繋ぎ目)の適合を上げるためには、マージン部を高倍率で見る必要があります。
倍率は上げれば上げるほど状況が詳しく把握できるので、最大倍率で見ていくことが必須条件です。歯科用顕微鏡を使っていればよい適合で出来ているとは限りません。最低倍率で見ていては、肉眼での治療と同程度です。
当院では『高倍率(20~30倍)』での治療を貫いています。
一本の歯の詰め物や被せ物の型採りに最低でも一時間をとり、マイクロスコープを使って最大限精密な型採りを行います。そして、顕微鏡を使って歯にピッタリ合った詰め物・被せ物を作ることができる歯科技工士とも提携しています。高精度の被せ物を製作するためには、歯科医師の技術のみではなく、歯科技工士の技術も大切だからです。
5まとめ
以上の事から、高い技術や高性能の機材の導入というハードルがあるため、日本の歯科医療は、詰め物や被せ物の適合にこだわることを避けてきました。それが、やり直し治療の原因になっています。当院は、これまでの歯科治療を反省し、歯科医師としてやるべき高精度の歯科治療を提供していきたいと考えています。
精度は歯科医の考え方によって左右されてしまいます。
当医院では、『この程度(の適合)でいいや』はあり得ません。
精度にこだわればこだわるほど、高度な治療技術と治療時間が必要になってきます。むし歯の再発を抑え、詰め物・被せ物を長持ちさせることが、数年、数十年後の患者さんにとって最良のことと考え治療しています。
なぜなら、精度の低い被せ物は、結果的に患者さんに損をさせてしまうからです。失ってしまったご自身の歯は二度と生えてきません。
むし歯予防は、日々の歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどによる清掃が重要です。そのためにも、清掃性の良い詰め物や被せ物を入れてむし歯の再発を抑え、歯を長持ちさせていただきたいと思っております。
当医院での被せ物の動画
関連ページ
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞