記事概要
むし歯予防はされていますか。一般的には定期的な歯のクリーニングがむし歯予防に繋がるとされていますが、当院では違います。ぴったりあう詰め物・被せ物の治療をし、正しい歯磨きでむし歯予防は十分だと考えています。むし歯ができるメカニズムやできやすい場所を知り、むし歯予防について考えていきましょう。
1はじめに
本ブログは、患者さんから寄せられたお悩みへの回答を中心に、皆さんにぜひ知っていただきたい大切なお話を、できるだけ分かりやすくまとめて記事にしています。
今回は、患者さんからのお悩みではなく、よくある歯科治療の現場の問題を例に、特に知っていただきたい事実をご説明いたします。今回のブログはむし歯予防に必要な事です。一般的には、定期的に歯医者さんで歯のクリーニングをすることがむし歯予防に繋がるとされています。しかし、当院の考え方は違います。ぴったりあう詰め物・被せ物の治療をすることと、正しい歯磨き(ブラッシング)ができて初めてむし歯予防はできると考えています。日々の歯ブラシ無しでは予防できませんが、歯科医院でのクリーニング無しでも予防は十分できるのです。正しい予防の知識を身に着けていただきたいと思います。
2むし歯は脱灰と再石灰化のバランスでできている。
現代の人類にとっては、むし歯との闘いは永遠の課題です。
日本人が歯を失う原因の第2位が『むし歯』です。抜歯の原因の1位の歯周病(42%)についで、次に多いのがむし歯(32%)なのです。
このように、多くの方がむし歯で歯を失います。
そして、むし歯のなりやすさに影響するリスクが幾つかあります。下記に代表的なものをあげてみます。
- 細菌の感染
- 唾液の緩衝能と量
- 生活習慣
- ブラキシズム
- 歯根の露出
- ブラッシングやフロッシングのテクニック
- 清掃を妨げる歯列不正
- 詰め物や被せ物の精度
このように、むし歯になりやすさは1〜8などの影響をうけます。逆を返せば、これらを回避できれば、むし歯にはなりにくくなるという訳です。
そもそも、むし歯の始まりは、細菌が出す“酸”です。
むし歯菌がお口に入ってきた炭水化物や糖質を栄養にして、グルカンという粘着物を作り歯の表面に付着します。この粘着物はとてもネバネバした物質で、この中でむし歯菌や他の細菌がどんどん増殖し始めます。これがいわゆるプラーク(歯垢)です。
これらの事により、プラークが酸性にかたむき、しだいにエナメル質や象牙質を溶かしていきます。これが「脱灰:むし歯」です。
しかし、人間にはこれらを修復する能力が備わっています。それが『唾液』です。唾液が十分に出ていると、プラークは中性に戻り、溶けた歯が補修されます。これが再石灰化です。
つまり、口腔内環境とは、(細菌が出す)酸が起こす脱灰と、唾液による再石灰化のバランスで出来てきます。
私たちは、年をとるごとに唾液の分泌は減少し、再石灰化の能力が落ちていきます。それだけむし歯になるリスクが高くなっていきます。若いときはむし歯にならなかった人でも、高齢になると唾液の減少により、むし歯になりやすく、進行も早く重症化しやすくなるのです。また、同じお口の中でも唾液の届きにくい場所は、むし歯のリスクが上がります。
関連ページ
- 引用:安藤雄一, 相田潤, 森田学, 青山旬, 増井峰夫.永久歯の抜歯原因調査報告書東京: 8020推進財団; 2005. GO
3むし歯ができやすい場所
加齢による唾液量の低下などにより、むし歯のリスクは高まりますが、むし歯は予防したいところです。しかし、歯のどの場所に気をつけるべきかを知らないと、むし歯予防もうまくいきません。
今回のブログでは、むし歯ができやすい所を、きちんと知っていただき、効率よくむし歯予防をしていただけるような情報発信をしたいと思います。
では、どのようなところにむし歯ができやすいのでしょうか?
基本的には、歯ブラシやフロスが当たりにくく、歯垢が残りやすい場所です。具体的には窪みがあるところです。ここに歯垢が残りやすいのです。日々の歯磨きは、毎日歯垢を落とすことにより歯の周りの細菌を落とし、細菌が出す酸を減らす、またはさらされる時間を減らすことができます。そのことにより、再石灰化を優勢にし、むし歯の発生を抑えることができます。
それでは、むし歯の好発部位(できやすい場所)を具体的に説明します。
むし歯の好発部位は、歯の周りにある溝や材質的に弱いところです。例えば、①咬合面などの歯の表面の溝、②頬・口蓋・舌側面の裂溝、③頬・口蓋・舌側面の歯ぐきの近く、④歯と歯の間、⑤歯肉退縮して露出した象牙質、⑥適合の悪い詰め物や被せ物のつなぎ目などです。
それでは写真で解説していきます。
歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目をピッタリ合わせるのは難しく、上手くフィットしていない繋ぎ目に歯垢が溜まって、むし歯が再発します。むし歯治療の80%が、この繋ぎ目からのむし歯の再発と言われています。
いかがでしょうか?
普段、『このあたりがむし歯になりやすいな。』と考えながら歯磨きをしていますか?
特に、(5)の歯と詰め物や被せ物との繋ぎ目は、歯科治療の方法が関わってくる部分です。いくら丁寧に歯磨きをしていても、このように繋ぎ目が不十分であれば、日々のブラッシングも意味がありません。
それでは、ここからは、より専門的な視点で、注目したいむし歯予防を解説していきます。
4詰め物・被せ物の不適合と根面カリエスが深刻
前に述べた、むし歯の好発部位の中でも、最も強調したいのが、(5)の詰め物や被せ物の不適合です。
ここは、どうやっても歯垢は落ちません。
ご家庭の歯磨きのみならず、歯科医院で歯垢除去を行っても落とせません。
ですから、ぴったり合っていない詰め物・被せ物が入ると、必然的にむし歯の再発が運命づけられます。
もちろん、遅いか早いかは個人差がありますが、いずれは、合っていない歯と詰め物や被せ物とのつなぎ目から細菌が入り込み、むし歯になっていきます。
ですから、詰め物・被せ物の治療を受ける時は、歯科用顕微鏡を用いて、ピッタリと合う詰め物・被せ物をしてもらう必要があります。
折角、治療をしたとしても、数年後には、またむし歯が再発するとしたら悔しくないですか?何よりもむし歯の再発を繰り返す事で、どんどん歯の寿命が短くなっていきます。それだけは避けたいものです。
また、もう一つのポイントである、④歯根が露出している部分についてもご説明します。
歯根はほとんどが象牙質でできているので、すぐ歯髄に届きやすい部分です。歯肉が退縮している(歯ぐきが痩せてしまっている)ことが多い高齢者は、ここにむし歯が多発します。(根面カリエス)
根面カリエスの場合、抜歯につながりやすいので、とても注意が必要です。
高齢者の場合、歯根が露出しているだけでなく、唾液の減少もむし歯の進行に拍車をかけます。
また、処方されている薬の副作用で唾液が減少することもあります。よって、若いころと違ってむし歯のリスクが上がるのです。高齢者の方は、より一層、むし歯予防に注意する必要があるのです。
5『P.M.T.C』をしなくても適切な歯磨きで、むし歯予防はできる。
それでは、ここからはむし歯予防に焦点をあててご説明していきます。
むし歯の原因は様々ですが、むし歯予防の基本は歯の清掃です。
患者さんお一人お一人、歯並びも違いますし、それぞれの口腔内の状態によって清掃器具を換えたりしながら、歯垢の落とし方を練習する必要があります。
しかし、現在の歯科治療においては、一般的にはほとんど行われていないと、私は感じています。
一般的には、P.M.T.Cという、歯科医院で行う歯のクリーニングでむし歯予防を行うという考え方が普及していますが、当院の考え方は、ちょっと異なります。
そもそも、毎日、ご自身できちんと歯磨きができていれば、P.M.T.Cをする必要はありません。要するに、適切な歯磨き(ブラッシング)指導がなされていないことが問題なのです。
当院の考え方は、ピッタリと適合した詰め物・被せ物を行い、適切な根管治療を行う事と、確実な歯磨き(ブラッシング)で、むし歯予防すべきという考え方です。
実際には、歯磨き(ブラッシング)は意外に難しいのです。自己流では歯垢が落ちていないことが多いので、他人にチェックしてもらう事が必要です。当医院のメインテナンスは歯科用顕微鏡で何処に歯垢が残っているかを動画で見ていただき、落とし方をその場で実際に練習します。個々の方で歯並びも違いますし、歯肉の痩せ方も違うので、歯間ブラシの当て方を工夫したり、エンドタフトブラシを使ったりして歯垢を落とす練習をします。
ご自身で、歯垢が残りやすい場所やむし歯になりやすい象牙質が露出した部分を理解したうえで、歯ブラシや歯間ブラシ、フロスを使ってしっかり歯垢を落としていくように丁寧に指導します。
もちろん、詰め物や被せ物との繋ぎ目が上手く合わずに歯垢が溜まっている状態を解消するため、マイクロスコープを使って歯に繋ぎ目をピッタリ合わせ、歯垢が溜まりにくい、清掃しやすい環境つくりをするのが基本です。
できるだけ長い時間、ご自身の歯でお食事を楽しんでいただけるような口腔内環境を造るお手伝いをしていきたいと思っています。インプラントや入れ歯を入れないで済むよう、むし歯予防の知識を高めていただきたいと思っております。
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