岡野歯科医院
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お悩み相談

【お悩み相談】Q6.むし歯と歯周病予防のために、歯科医院で勧められて3ヶ月ごとにクリーニングをしてきたのですが、むし歯ができてしまいました。どうしてむし歯ができたのでしょうか。

記事概要

以前より皆さんから頂く歯に関する不安やお悩みについてブログを通じてお答えさせていただけたらと思い、この度「お悩み」と、その解決法の提案についてコラムを書きました。

1回答:3か月に一度のクリーニングでは予防できないことがあります。

最近では、歯医者さんは治療に行く所ではなく予防のために行く所であるということが周知されつつあり、多くの歯科医院でむし歯や歯周病予防のための歯のクリーニングをするようになりました。

しかしながら、“定期的なクリーニングを受けているのにむし歯になってしまった”ということが、しばしばおこります。
歯医者さんできれいにしてもらっているのになぜ?と思われるかもしれませんが、実はむし歯の予防は簡単ではなく、いろいろな条件が揃って初めてむし歯予防ができるのです。

予防の条件の一つは、歯垢を落とす(むし歯菌を落とす)ことです。それも毎日、毎食落とすということです。期間が空くとそれだけ歯垢がそこに留まっていたということなので、むし歯ができてもおかしくないのです。

また、むし歯になってしまったら、治療をすればよいと安易に考えている方も多いと思いますが、実はむし歯の治療をするとその後むし歯のリスクが上がるのです。
正確にいうと、詰め物と歯とのつなぎ目に、むし歯菌が溜まりやすくなるため、そこからむし歯が再発しやすくなるのです。つなぎ目に溜まったむし歯菌(歯垢)はクリーニングでは落とせません。そうするとそこからむし歯が再発していきます。 再発するとむし歯は詰め物や被せ物の下で広がり、治療した時よりさらに歯が大きく失われていきます。

ですので、つなぎ目に歯垢が溜まりにくいように、つなぎ目をピッタリ合わせていくのが重要です。適合性とは)ピッタリ合っていないと、むし歯の再発は運命づけられてしまいます。

そして、むし歯が重症化すると歯の神経を取らなければいけなくなることがありますが、歯の神経を取る治療は、どんな名医が治療しても成功率は100%ではありません。特に、歯の神経治療が上手くいかないと、歯の根の周りに膿ができ、歯肉が腫れたり痛んだりしていきます。このような状況が深刻化すると最終的には抜歯となってしまうこともあります。

残念な事に、日本においては歯の神経の治療の成功率は低いのが現状です(日本における根管治療の成功率について)ので、できるだけ歯の神経は温存しておきたいところです。
また、歯の神経を取ると歯ぎしりなどの咬合力に耐えにくくなります。歯がもろくなってしまうため、歯にヒビが入って割れてしまい、やはり抜歯に至ることもあります。

以上のように、最初のむし歯の治療(詰め物・被せ物治療)がきっかけで次々にトラブルを起こし始め、歯の寿命を逆に短くしてしまうことがあります。ですから、『むし歯になったら治療すればよい』ではなく、『むし歯治療を受けないようにする』ことが、歯の寿命を延ばすことにつながることを知っておいてください。
むし歯治療で患部の修復はできても、結局は天然の歯にはまだかなわないのです。

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2唾液はむし歯から歯を守る唯一の物

それでは、どのようにしてむし歯を予防すれば良いのでしょうか? まず簡単にむし歯のメカニズムをお話ししてから、定期的なクリーニングを受けているのにどうしてむし歯になってしまうかについて説明していきたいと思います。
むし歯とは、(酸で)歯が溶ける病気です。歯の周りに住みついているむし歯菌が酸を出し歯を溶かします。
酸にさらされた部分が酸性になることにより歯が溶け、ミネラル(カルシウムやリン)が逃げ出し、歯が壊れていきます。
更に歯の奥(神経の方)へとむし歯が進行すると、その先にある神経が細菌感染してしまい、炎症を起こします。

これが歯痛の原因です。ここまでくると、歯の神経を取らなければならなくなってしまいます。 このように、むし歯はむし歯菌が出す酸が原因ですが、実はお口の中にはむし歯に対する防御機構があります。

それは、唾液の作用です。
唾液の組成は99.5%が水、残りの0.5%が有機質:タンパク質と無機質:ミネラルなのですが、むし歯の予防に関して非常に重要な役割があります。というより、そもそも唾液が無ければむし歯の予防はできません。唾液はむし歯から歯を守る唯一の物と考えてもさしつかえありません。

では、唾液はむし歯の予防にどのように関わっているのかについてご説明しましょう。

唾液の作用

①清掃作用

唾液に含まれるムチンとアルグチニンなどのタンパク質が、お口の中の細菌を凝集して洗浄しやすくする作用があります。

②抗菌作用

唾液には、細菌を殺菌するリゾチームやペルオキシターゼなどの酵素や、ヒスタチン、β-ディフェンシン、分泌型IgAなどの非酵素系タンパク質、細菌の増殖を抑制する非酵素系タンパク質のラクトフェリンなどが含まれています。

③pH緩衝作用

唾液には、むし歯菌が出した酸を唾液中の重炭酸塩、リン酸塩、タンパク質が中和する働きがあります。ほとんどは、重炭酸塩によるものですが、その力は唾液の分泌量に大きく影響を受けるとされています。唾液の分泌量が少ないと緩衝作用が弱くなるため、むし歯のリスクは上がります。

④抗脱灰作用

唾液の中には、カルシウムイオンが存在します。このカルシウムイオンが、歯垢に結合することで歯石を形成します。そのため、人間の体にはカルシウムと特異的に結合するカルシウム結合性タンパク質というものが存在します。この、カルシウム結合性タンパク質が唾液中のカルシウムイオンと結合することにより、歯石の形成を防ぐのです。また、この結合は歯の表面でおこなわれ、薄い被膜を形成します。この被膜のことをペリクルといいます。このペリクルにより歯の表面が保護され歯の脱灰を抑制するのです。

以上のように、お口の中には、むし歯から歯を守るシステムがあります。
むし歯ができてしまうのは、このシステムが追い付いていないことが考えられます。そこで重要になってくるのが脱灰と再石灰化の関係です。

3脱灰と再石灰化について正しく知っておこう

食事の中に含まれる糖によって、歯垢(プラーク)のpHは臨界pH以下に低下します。

一日三回の食事をとることでエナメル質の表面は脱灰されてしまいます。しかし、この脱灰は軽度で一過性であるため、上記のあるような唾液の緩衝作用により回復し、脱灰された歯は再び石灰化され修復されます。 この石灰化による修復を再石灰化といい、脱灰よりも再石灰化の時間が長ければ歯は脱灰されても進行せずにむし歯にはなりません。

脱灰が進みやすいケースとは、間食の頻度が多い場合などです。とくに夜食の摂取などは脱灰が再石灰化を上回り、脱灰が進行されてむし歯になりますので注意が必要です。
また、間食の頻度だけではなく食べ物の性状も脱灰と再石灰化の関係に影響を与えます。

スウェーデンの精神科病院で行われたう蝕(むし歯)の研究では、食事とともにパンに調味料として加えられた砂糖はむし歯に大きな影響を与えなかったのに対して、砂糖を含み粘着性のあるキャラメル、チョコレートのような食品を与えるとむし歯の発生が急速に増加したとの結果が出ています。

つまり、粘着性でお口の中に停滞しやすい食品ほど糖を持続的に供給し、長時間にわたり歯垢中のpHを低下させてしまいその結果、再石灰化が脱灰に追い付かず、むし歯が進行していきます。

むし歯ができる仕組み

このように、お口の中では常に脱灰と再石灰化が続いており、再石灰化が脱灰よりも優勢ならば、むし歯は進行しません。

4定期的なクリーニングよりも大切なこと

口腔ケアの目的は、歯の周りにいる細菌の塊である歯垢を減らし酸を減少させ、唾液による再石灰化を優勢にしてむし歯の進行を抑えることです。
皆さんは、毎日このために歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシを行っています。

定期的な歯科医院でのクリーニングは、日頃の歯ブラシで落とせてない歯垢を落として予防しようという考え方ですが、日ごろからブラッシングで歯垢が落とせていないところは、クリーニングの間隔が長いとすぐに歯の周りに細菌がまた溜まり始めてしまいます。クリーニングまでの間隔が長ければ長いほど、歯の周りに細菌が溜まり続けていたことになります。そうすれば、むし歯ができやすくなってしまいます。歯科医院でのクリーニングの間隔は、1~2週間に一度など、かなり短くしなければむし歯の抑制にはつながりにくいと思います。

ですので、真剣にむし歯予防をされたいようでしたら、歯科医院でのクリーニングに頼らず、ご自身での口腔ケアでむし歯予防を組み立てていくことをお勧めしています。
定期的なクリーニングを受けた日はきれいに歯垢が落ちていても、翌日からご自身できちんと歯垢がおとせていなければ、次のクリーニングまで歯垢がたまり、むし歯になる可能性が十分にあります。但し、歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシで歯垢を落とすことは簡単ではありません。自己流だと上手く歯垢が落ちていないことが多いので、口腔ケアの指導に熱心な歯科医院を探されると良いと思います。

毎日、完全に歯垢を落とすのは意外に難しいです。
ですので、常に、どこかに歯垢の落とし残しがあると考えておいた方がいいでしょう。その時に、その残った歯垢の中にいるむし歯菌をアクティブにしないために、可能なら砂糖の摂取量を制限することをお勧めすることもあります。

また、生活習慣も是非気をつけて欲しいところです。こちらについては、詳しく当医院のブログに載せています(ブログ:“歯「磨き」”は、もうやめましょう。)。

むし歯のリスクは年齢と共に上がっていきます。それは加齢によって唾液腺の機能が低下したり、薬の服用が増え副作用で唾液が減少し、むし歯のリスクが知らない間に上がっていることなどが考えられるからです。

歯垢が毎日落とせている、歯垢が溜まりにくい精度の高い詰め物や被せ物が入っている、間食がすくない(特に就寝前)、 シュガーコントロールができている、唾液の緩衝能力が強い、むし歯菌の感染が少ない、などが揃うと予防がしやすくなります。

以上のようにむし歯になるのは様々な要因があり、3か月に一度のクリーニングだけでは予防できないことがあります。

まずは、ご自身の毎日の正しいブラッシングと生活習慣に気を付け、むし歯予防を心掛けることをお勧めします。 (歯科検診のページご御覧ください)

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根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞

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