記事概要
歯の神経をとったり、歯の神経の通り道である根管を清掃、殺菌・消毒する処置を根管治療と言います。この記事を読まれている方は、根管治療の経験がある方が多いと思います。
根管治療は、歯科治療の中でも多く行われる治療の一つですが、残念ながら失敗も多い治療です。歯の神経をとって被せ物までして、やっと終わったと思って安心していたら、後から歯が痛んだり、歯茎が化膿して腫れてくることがあります。ビックリする方もいるかもしれませんね。慌てて歯科医院に駆け込むと、歯の根の周りに膿があり、最悪は治せないので抜歯と言われてしまう可能性もあります。根管治療は皆さんが想像する以上に難しく、特に日本は失敗が多いのです(日本における根管治療の成功率)。今、まさに根管治療の失敗で抜歯と言われ悩んでいる方もいると思います。今回は、根管治療を諦めずに歯を残すことのメリットについてお話ししたいと思います。
当医院は、顕微鏡歯科治療専門の歯科医院です。2010年より、むし歯治療(詰め物・被せ物)、根管治療、歯周病治療、抜歯などの口腔外科手術、定期検診など、全ての治療に歯科用顕微鏡を使用し、治療の成功率を高めてきました。長年、歯科用顕微鏡を使って治療してきた結果、治療成功率の高さ、予後の良さを日々実感しています。皆さんのお悩みを真剣に解決するため、これまで蓄積してきた顕微鏡歯科治療の知識と技術をもって貢献したいと思っています。
では、歯の神経の治療が失敗している場合の治療について説明していきたいと思います。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
歯科医師岡野 眞
1はじめに
歯の神経の通り道である根管が細菌で汚染され膿ができることがあります。
しかし・・・
- 歯の神経が死んで腐敗し、もう治療しても治らないから抜歯しかない
- 根管治療した歯が膿んでしまったので、再根管治療しても成功しないから抜歯
- 根管治療した歯に膿があるけど、大きすぎて治らないだろうから抜歯
など、治療してもらうつもりで行ったのに、抜歯の宣告を受けてしまうこともあります。根管治療は、歯科治療の中で約20%を占めていますが、皆さんが思うより難しい治療なのです。根管治療をしても膿ができたり、その膿を治そうとして再根管治療をしても治らなかったりすることも多いのです。
根管治療は苦手なので、抜歯してインプラントやブリッジを勧めてくる医院も多いと思います。膿んでいるとなおさら早く抜歯して膿を無くした方が良いのではないかと患者さん自身も思いがちだと思います。
ただ、膿ができていたとしても、必ずしもすぐに抜歯にはならない、膿んでいても歯が残せる可能性がある、ということをお伝えしたいと思います。
2根管治療は、歯の存続を左右する
歯の神経を取ったり、細菌感染で汚染された根管を清掃・殺菌・消毒し根管充填材で封鎖する処置を根管治療と言います。皆さんは、たかだか小さい歯の中の根管を清掃したり消毒するのは簡単だろうと思う方もいるかもしれません。しかしながら実際はその逆で、小さいから難しいのです。そして、小さい歯の中で根管は更に複雑に枝分かれしていたり、曲がったり、石灰化して細くなったりしています。そして、根管に入り込んでくる細菌は目に見えないくらい小さく、細く、曲がっていても、どんどん根管の隅々まで侵入し感染を起こすのです。
根管の中に入り込んだ細菌は、そこで増殖した結果、歯根の周りの組織が炎症を起こします。それが元で、根の周りに膿が溜まってくるのです。そしてその膿は、周りの組織を圧迫して痛みを発したり、歯茎が腫れてそこから膿が漏れてきたりします。
通常は、根の周りにできた膿を改善するために感染根管治療をしますが、歯科医院によっては、もう抜歯した方が良いのではないかと勧めてくるかもしれません。現実に、感染根管治療は難しく治りにくいのです。
3感染根管治療とは
細菌感染で根管が汚染された状態を改善し、根の先にできている膿を改善する治療を感染根管治療と言います。
感染根管治療が行われる主なケースは、
- 根管治療が一度も行われていないが、歯髄が死んで腐敗しているケース
- 根管治療が一度以上行われていているが、根管に細菌感染が残存しているケース
の二つです。どちらも、根管が細菌によって汚染され、根の周りに膿を持っていることが多いです。
A.根管治療が一度も行われていないが、歯髄が死んで腐敗しているケースの原因は、
むし歯や歯冠破折(歯に入ったヒビ)が多いです。
B.根管治療が一度以上行われていているが、根管に細菌感染が残存しているケースの原因は、
以前行われた根管治療が失敗している、もしくは根管治療は成功していたが、被せ物の不適合などにより後から根管に細菌感染が起こったこと等があります。
以上の原因から、根管に細菌感染が起こり根の周りに膿を持ち始めるのですが、必ずしも痛みや腫れなど症状が出ずに膿があってもご本人は気が付かないことも多いです。
そして、ある時歯茎が腫れたり痛みが出て気が付いたり、歯科医院で撮影したレントゲンやCT画像にたまたま膿が写り、歯科医に指摘されることもあります。
通常は、根の周りにできた膿を改善するべく感染根管治療を開始します。根管を清掃・殺菌・消毒をしっかりすることで膿が改善できるケースがあるのです。感染根管治療すれば、膿があっても抜歯しないで済む可能性があります。
4感染根管治療の成功率
感染根管治療の成功率は海外のデータでは、約80%と言われています。当医院の感染根管治療の成功率は、91.4%です。
日本の根管治療の成功率は30~50%と言われており、日本の歯科医はそれだけ根管治療が苦手であることがわかると思います。つまり、抜歯をしてブリッジやインプラントする方が、苦手な根管治療をするより結果が良いと判断されてしまうのです。
つまり、術者の得手不得手により治療方針が決まってしまうということになります。
5特に感染根管治療は難しい
細菌は目に見えないくらい小さく、根管のどこへでも入り込んでいきます。根管が複雑だと、殺菌・消毒は困難を極め、上手くいかずに膿が治らないということが起こります。すでに根管治療がされている根管の再治療は、更に成功率が下がります。それは、根管が人為的に削られているため、段差ができていて器具が入らなくなっていたり、場合によっては治療器具が根管に折れ込んで塞がっていたりなど、根管治療が成功しにくい状況が人為的に作られてしまっていることも多いからです。
そういうことから、どうせ感染根管治療は成功しないのだから、抜歯をしてしまおうということになりやすいのです。
6感染根管治療により歯を残すメリット
根管治療によって治癒が望めなかった場合、その歯は抜歯となりその後何らかの補綴処置(入れ歯、ブリッジ、インプラント)が行われていることが多いです。日本の医療保険制度では入れ歯とブリッジのみカバーされており、インプラント治療は自由診療となります。特にインプラント治療は高額ではありますが、入れ歯やブリッジと比べて健康な歯を削る必要が無く、日本でも多く行われている補綴処置であります。
一般的に生存率が高いと言われているインプラント治療ですが、インプラントの周囲で炎症がおこるインプラント周囲病変の存在も無視できません。
ヨーロッパ歯周病学会の報告(2015)からインプラント治療を受けた患者さんの43%がインプラント周囲粘膜炎に、22%がインプラント周囲炎にかかっているというデータが発表されています。インプラント周囲炎は歯周病と同じように進行・罹患するため骨吸収や腫れを引き起こします。インプラントを埋入した方は周囲炎の予防のためより一層予防に努める必要があります。インプラントの周囲で炎症を引き起こした場合、リカバリーし完全な治癒を得ることは非常に難しいと感じています。
7感染根管治療を諦めてほしくない
感染根管治療は確かに難しい治療ですが、成功率を上げ抜歯を免れることもできるのです。
それは、当医院の感染根管治療の成功率からも明白です。
では、どうやって成功率を上げているかを説明したいと思います。
感染根管治療を成功させるために必要な事
- 治療用顕微鏡で根管を視認しながら治療する
- CT画像によって根管を三次元的に把握する
- ラバーダム防湿を行う
- 十分な治療時間の確保
- 根管治療に適切な治療器具と薬剤、材料を使う
- 歯科医やスタッフの顕微鏡治療の豊富な経験と知識
以上により、当医院は感染根管治療の成功率を上げることができています。詳しくは、根管治療のページをご覧ください。
日本にも根管治療の得意な歯科医院があるのです。膿があってもすぐには抜歯せず、諦めずに感染根管治療を是非受けていただきたいと思います。そうすれば、インプラントやブリッジ、入れ歯を入れずに済む、もしくは先延ばしし、できるだけ長くご自身の歯を使っていくことができるかもしれません。
8症例紹介:他院で根管治療中に歯茎が腫れてしまった方が、再根管治療で膿が改善したケース
《お悩み》
根管治療をしても、歯茎の腫れが治らないという事で当院に来院された患者さんです。
《症状と臨床所見》
下顎右側の奥歯の歯茎が赤く腫れて歯肉に膿瘍がみられます(photo.1)。レントゲン画像とCT画像を確認すると歯根を取り巻くように歯槽骨の吸収がみられました(photo.2)。以上の所見より根尖性歯周炎が疑われました。また、膿が大きく、歯根破折も考えられるケースです。
《治療》
CT画像にて根管の走行や形態、歯の残存量(歯として使える量が残っているか)をチェックしたのち、ラバーダム防湿の設置を可能にするために隔壁を作成しました。
その後、ラバーダム防湿を行い、治療用顕微鏡を使って再根管治療(非外科的歯内療法)を行いました。顕微鏡下で根管内を確認したところ、歯根破折は認められませんでした。
《治療後》
再根管治療により、患部の歯肉膿瘍が消失。
治療後のCT画像でも根尖病変の透過像の消失と歯槽骨の再生が確認できたので精密な被せ物をし、治療が完了となりました。
下が治療6ヶ月後のCT画像です(photo.3)。膿の影が消失し歯根の周りの歯槽骨が再生しています。
《主な副作用》
ラバーダム防湿が必要になり、開口時間が長くなります。歯科用顕微鏡による精密根管治療は、肉眼や拡大鏡では見えないところ(治療が不十分であった部分)が見えるようになるため、なすべき治療が増えるので治療時間や治療日数がかかります。
《治療期間》
おおよそ、3~5日(1回1時間の目算です。)
《治療費》
根管治療費(消費税込み):大臼歯 176,000円 (根管治療費以外に別途、被せ物・土台除去、隔壁作成の費用がかかることがあります。詳細は、お問い合わせください。)
9歯の神経の治療(根管治療)中や被せ物治療後の歯茎の腫れや膿で悩んでいる方の治療メニュー
当院では、何度根管治療をしても歯茎の腫れや膿が治らない方に、以下のように治療を進めていきます。ただし、これは一般的な治療方針です。患者さんの個々の状況により、治療内容に多少の差異が生じます。
膿で悩んでいる方は、一度、お電話でお問合せいただくことをオススメいたします。
STEP.1
初回カウンセリング
問診でお口の問題をヒアリング初診当日はカウンセリングとなります。
① 問診表の記入
② マイクロスコープ検査、レントゲン・CT撮影と診断
③ 治療計画および治療内容のご説明
※治療期間、費用等、患者さんと相談の上、治療方針を決定いたします。その後、次回の治療予約となります。
STEP.2
隔壁作成
まずは、隔壁を作成します。隔壁とは、唾液から根管への細菌感染を防ぐためと、根管治療で次亜塩素酸ナトリウムなどの適切な薬剤を安全に使えるようにするためのラバーダム防湿を行う為に作成する「壁」の事です。大きく歯が欠損していても隔壁を作ることでラバーダム防湿ができるようになり、この先の治療が安全に確実に行えるようになります。なお、「隔壁作成」前に、被せ物・詰め物・土台・裏層の除去が必要なことがあります。
STEP.3
根管治療開始
ここから根管治療の開始となります。1回の治療時間は、約60分ほどです。治療回数は、治療する歯の根管の数や根管の複雑さによって変わります。(治療回数はおおよそ1~5回位です)
根管治療時は、毎回、ラバーダム防湿を設置します。そして、CT画像を確認しながら治療用顕微鏡下で根管の清掃・殺菌・消毒・根管充填を精密に行います。
STEP.4
支台築造・仮歯作成
根管治療が完了した後は、土台作成(支台築造)を行っていきます。当院では、土台作成時にもラバーダム防湿を行います。また、必要に応じて更に仮歯を作成し、経過観察に入ります。
STEP.5
治療判定
当医院では通常、根管治療終了後6ヶ月後に患部のCT撮影を行い、治療効果を判定します。
根尖病変(根の先の膿)の改善がみられた場合は、被せ物治療に移っていきます。被せ物治療は、むし歯が再発し根管に再感染しないよう、治療用顕微鏡を使って精密に行います。
根尖病変の改善が見られない場合は、患者さんと相談後、外科的歯内療法、歯根の部分抜歯などを予定します。
10当医院ではセカンド・オピニオンも行っています
CHECK
他院で治療中であっても可能です
- 根管治療をやり直しているが、膿んで歯茎が腫れてきてしまう。
- 根管治療しても膿や歯茎の腫れや消えないので抜歯と言われた・・・
- 痛みが無いのに膿が何故か消えない・・・
という方は、お気軽にご相談ください。
当院は自由診療となっております。以下に治療費を掲載いたします。
※各種クレジットカードでお支払いいただけます。
カウンセリング料金 ¥11,000
・顕微鏡による、むし歯・歯周病検査など
・レントゲン撮影
CT撮影料金 ¥11,000
通常、CT撮影は別途 33,000円がかかりますが、初回のみ11,000円で撮影します。
全国で11名の歯科医師のみ、
日本で最も厳しい顕微鏡歯科基準をクリア
顕微鏡歯科ネットワークジャパン認定医・日本顕微鏡学会認定医
根管治療・顕微鏡歯科治療専門 歯科医岡野 眞